前置き
これは、個人的な見解です。
バイクのマニュアルなどには、新車の状態からおよそ500kmくらいは、急加速などの急が付く運転を控えるように、と記載されていることが多いと思います。
実際、この慣らし運転に関しては特に決まったルールはなく、メーカ、ショップ、バイク乗り、それぞれが色々な意見を持ってるのが現実なので、これが正解だ!という「やり方」や「距離」は存在しないと考えていて良いでしょう。
一方で、そもそもエンジンの慣らし運転という文化は加工精度が今よりずっと低かった時代、あるいはより部品間のキャパシティが小さいサーキット車両のメカニックなどから出てきたものであって、現代のメーカーなど熟練者が組み立てたエンジンに関しては絶対に必要なものではない、という意見もあるようです。
私は自分一人で腰上も腰下もバラして組み立てる程度にはエンジンに慣れている方ですし、実際に自分で組んだエンジンを載せたバイクで高速なども走っています。
そんな私も、やはり慣らし運転は必要だよなぁと思うわけです。
慣らし運転が必要だと思う理由
- エンジンに限らず、稼働部分には精度や素材やメーカーが異なる部品が多数使われているので、動かしてすり合わせしないと落ち着かない部分・部品があるのは事実
- どんなプロでも組み立てのミスは起こりうるし、作業が正しくても部品に不具合が潜んでいる場合もあり、初期不良が起こる可能性はゼロではない(むしろ最初ほど高い)
- 機械は正常であっても、ライダーがバイクに習熟する猶予期間という意味での、人間の慣らしという意味合いもある
それぞれをもう少し説明します。
1については言わずもがなでしょう。機械部品には精度という概念があり、設計や製造には必ず誤差が織り込まれています。精度の高い部品と精度の低い部品があった場合、ある程度動かして潤滑・摩耗させ、機械部品同士の遊びを安定させるには、やっぱり実際にエンジンや車両を動かすのが一番だし(全てを一つ一つを精密測定して事前に整形や研磨ができればよいですけどねw)、そしてある程度の時間を要します。分かりやすいのはディスクブレーキでしょうか。アタリが出るまで本来の性能が発揮できない、という部品・機構も存在することを忘れてはいけません。
2はリスクマネジメントの観点です。部品に問題が潜んでいて、調子に乗って全開走行中にエンジンブローなどが起きると、バイクという機械だけでなくライダーも危険に晒されます。初期不良に相当するリスクを考慮した運転をした方がいいよ、という話です。
3はよく聞きますよね。人間の知覚や反射機能にも慣れやチューニングが必要な場合があります。四輪にくらべ、二輪は人間の感覚や動きで制御する要素が大きいですし、入力操作とバイクからの実際のレスポンスを体に覚えさせる(スロットルの開け具合に対する加速力や、ブレーキの反応といった繊細で感覚的なバランス要素も多い)のも、極めて重要だと思います。
意味のない慣らし運転
一方で、慣らしだから・・・と必要以上に低速で抑えた運転を続けたり、高速などでひたすら距離を稼ごうとする慣らし運転にはあまり意味はないと思います。
1の意味を考えると、ある程度の動きや負荷を掛けないと慣らしになりません。ベアリングや煽動面に現実的で適度な負荷を与えるため、エンジンも低速から高速まで使い(高回転を長時間、というのは2の意味でNG)、ブレーキやサスペンションも意識してよく使う運転(3の意味も兼ねる)でないと、単に時間と燃料を消費するだけになってしまいます。
私がお勧めしたい慣らし運転
こういった事を考慮して、自分は1,000km慣らしを実践し、推奨します。
- 抑えて走る最初の100km
・・・2の初期不良対策。他車が少ないルートで、いつバイクが止まっても大丈夫な運転。 - 普段自分が走る(走りそう)な道でのんびり走る100km
・・・3が目的。信号や曲がり角やコーナーの多いルートで体に馴染ませる運転。 - 時々瞬間的に無理をかけながら普通に走る残り300km
・・・1が目的。走り慣れた道で常用時を意識した運転。 - その後は普段どおりの感覚で走り、燃費やライダーの疲労具合、バイクの癖を確認していくシメの500km(つまり実質的な慣らし運転は上記500kmで終わっているとも言える)
冒頭に述べた通り、人それぞれの価値観や理論はあるのでコレが正解という訳ではありません。
当然、違う考えもあるでしょう。でもお互いのやり方を否定したり貶める必要はないのです。
あなた自身が安心できる、バイクを愛していると実感できる、そんな「自分なりの慣らし」で良いと思います。
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